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生きやすくするためのエッセンス

どうして僕はこんなに渡辺ペコが好きなんだ!渡辺ペコ短編集「ペコセトラ」を読んだ

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そういえば買ってから読んでなかった「ペコセトラ 渡辺ペコ短編集」を一気読み。

渡辺ペコの傑作「にこたま」が本当に良過ぎて良過ぎて、完結するまで「ペコセトラ」を読むのやめようと思ってました。完結後も何度も読み返しているうちに存在を思い出してがっつり読んだ次第です。

女の子がかわいい


僕が渡辺ペコのマンガを愛してる理由は率直に言うと「出てくる女の子が僕の好み」とにかく好み過ぎてモヤモヤしまくるのが良い。

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秋重学が描く女子も大好きなんだけど、渡辺ペコが描く女子は「男性からは見えないリアルなフツーの女子の悩み」を抱えつつ、男性に翻弄される冴えない20代女性像を見事なまでに描き切ってる。男性読者としては、そういった登場人物に愛おしさを感じずにはいられないのだ。

仕事や人間関係に疲れた20代女子が一人で温泉旅行に癒しを求めて出かける「N浜温泉紀行」。

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電車内で偶然隣り合わせた男性と夕食をともにする約束をしたが、チェックインした後温泉に入ってる彼女はムダ毛の処理を完全に怠っていることに急激な危機感を覚える。

恋人も好きな人もとんとご無沙汰で男っ気と色気のなさが超しっくりきてるこのカンジ…軽くなくヤバイ…


行きずりの恋とか考えたわけじゃないし…!と自覚しつつ身体ゴシゴシ洗いまくるシーン。そして極めつけは下着。

なんでよりによって旅行に「猫背矯正ハイパワーバッテンブラ」してきちゃうかなーわたし

そしてあくまでま上下バラバラ


そんなブラあんのかwwwwそして温泉地の百貨店にダッシュして妥協しつつもそれっぽい下着を買うというこのシーン。

細か過ぎるディテールに、男性からすると「そんなこと気にしなくていいだろw」とツッコミつつ、おそらく女子からは「すげーわかるww」という共感が得られるこの作品。

でもね、ルックスはかわいいわけですよこの女の子は。すげーかわいいくて、コミカルに女子の悩みを細かく描写してるからこそ男性から「長く付き合ったかわいい恋人」を見てるような錯覚に陥らせるから渡辺ペコのマンガは好きだ。

コマ割りが美し過ぎて鳥肌モノ

渡辺ペコのマンガは、「コミカルとシリアスの行き来」が天才的。細部の描写はあくまでもコミカルに描き、そしていくつかの伏線が走りつつそれらがすべて結実するページの表現は鳥肌が立ちまくるほど美しい。この快感を味わってしまうともう離れられない。ずるい。

役者を目指して都心に出るもパッとせず帰郷した俊一。処女こじらせる無愛想な浪人生の妹・千秋の幾つかの物語が進む「あに・いもうと」。

よくある「お兄ちゃんのことを男性として少し意識する」みたいな非現実的な展開は一切なく、それぞれの挫折や恋愛が控えめに描かれる。そしてピークは千秋が都内の大学にいき、俊一が地元で遠くを見つめ、蘭子が歌を歌うシーン。

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物語のすべてがこのシーンにつまっている。そしてさりげなく描かれる。あとがきにダ・ヴィンチの編集長が「あなたの作品には、神が舞い降りる瞬間がある」と評しているが、まさにこのシーンこそ僕にとってはゾクゾクするほど美麗な瞬間だ。



だいたいわかり過ぎるんだよ!僕だって挫折しまくってきたよ色んなこと。かわいい女の子が歌を歌ってくれて恋に落ちてきたよ!ああそんな20代の思い出すらフラッシュバックさせられて読んでてつらくなってきた。やはり天才の仕事である。




とまあこんな感じです。この短編集は「透明少女」も良いんだけど、一番好きなのはやはり「ジャグリング」かなー。女性編集者の、人間としての揺れ動く欲求をジャグリングに例えてコミカルに描くワンシーンは最高に面白い。こういうマンガに出会えるから人生は素敵ですね。

ペコセトラ (Feelコミックス)
渡辺 ペコ
祥伝社
2010-02-08