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生きやすくするためのエッセンス

所沢駅構内「狭山そば」に思いを馳せる

写真を撮るために立ち食いそば屋にかけこんだ昨日、「春菊天」に目を奪われていたことは告白しなければなりません。
コロッケそばのような「味わいが汁に溶けて独特の旨みが出る」というところでは玉ねぎたっぷりのかきあげ天そばでも同様であり、油が広がって味が出るというところでは各種天そばに共通するところであり、グズグズに溶けた食感が好ましいと言うところでは衣ばっかりのエビ天そばでも味わうことができます。

コロッケそばを語る



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2013年2月、突如はてブホッテントリ入りした「コロッケそばを語る」。
本当に素晴らしい文章でした。
それと同時に、「なんでおれがこれを書かなかったんだ!」と後悔したのも事実。
ブログを書いている人間であればわかるのではないでしょうか。
僕もそれくらい、あの「粗雑な文化」でもある立ち食い蕎麦を愛しています。

蕎麦は蕎麦でも、僕は「特定の駅の立ち食いそば屋」。
いや、もっと限定して「所沢駅の狭山そば」を心から愛していた人間。
過去形。
そう、2011年12月31日まで西武線所沢駅構内にあった狭山そば。
駅改築とともに消えていった狭山そばを僕は愛していました。

昔好きだった女のことなんてたいてい忘れています。
でも、変なきっかけで思い出すことがある。
時々おせっかいな友人がいたりもする。
「あいつ最近結婚して子供3人目できたらしいね!」
そんなこと聞いてねえよ。
余計な情報くれやがって。
元気そうじゃん。

@raf00 さんのブログを読んで僕はいままさにそんな境地。
ノスタルジーしかない文章に申し訳なさを覚えつつ書きます。


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僕と狭山そば所沢駅店


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僕は狭山そば所沢駅店の「春菊天そば」が本当に大好きでした。
埼玉の寒さに震えながら食べる春菊天そば。
もう人生で何杯食べたか数えきれません。

「ねぎ多め」とオーダーすると、一面を埋め尽くすねぎ。
過剰に濃い味のつゆ。
絶妙に揚げられたやや苦味のある春菊。
固めに茹でられた麺。

これほどおいしい蕎麦を僕は食べたことがない。
埼玉県はそば処として有名なお店も数多くありますが、僕が今まで食べてきたもっともおいしい蕎麦はやはり狭山そば所沢駅店の春菊天そばが断トツだったりする。

子供の頃から通っている「狭山そば」


10代がきんちょの頃。
僕は町田市にずっと住んでいました。
ただ親戚が東村山に住んでおり、小学生の頃は西武ライオンズの熱烈なファン。
秋山、清原、デストラーデという恐ろしいクリーンナップが猛威を振るっていた黄金時代。
西武球場に観戦しにいき、小学生の分際で食べた所沢駅構内の蕎麦。
あれから僕は虜になってしまったのである。

20代、大学生の頃。
当時付き合ってた女の子は所沢在住。
彼女と所沢でデートをし、帰り路の電車を待っている時にわざわざ反対側のホームに行ってまで食べたのもやはり狭山そばだった。
所沢なんてデートスポットなんか何もない。
つきつめると、僕にとって「所沢」といえば当時好きだった彼女と狭山そばしかないのだ。
メルヘンのかけらもないだいぶ残念な感じである。

そして30代の今。
僕はついに所沢に住むようになってしまった。
彼女と同棲をしているわけですが、下手すると「おまえわざと所沢の女選んでるだろ?」と言われてもおかしくないくらい所沢に執着していると思われても仕方ない。
そんなわけじゃなくて、好きになった女の子がたまたま所沢住みなだけであります。

所沢に住むようになってから、狭山そばにいく頻度は格段に増えた。
「ガキの頃食べたな」「学生の時は彼女とよく行ったなあ」とかそういうノスタルジーはまったくなく、ただ単に「仕事終わってお腹すいた→あれ?駅に蕎麦屋ある→食おう」という惰性のような動機。
しかしそんな惰性で入っても、いつも絶品の蕎麦をたったの300~400円で出してくれる。
ハマって当然である。

そして閉店の告知


2011年の10月くらいだったろうか。
突如として店に貼られた「閉店します。ご愛顧ありがとうございました」の張り紙。
理由は、駅構内の改築工事によるためのとのこと。
噂では、新しく綺麗に作り変えられる所沢駅(以前は古ぼけた駅であった)のコンセプトにあわないための実質的な立ち退き。
そうでなければ30年以上経営してきた名物店をつぶすわけがない。

僕はあまりのショックに、店員さんに向かって「改築工事終わったらもう一回やらないんですか?やってください!」とお願いをしてしまった。
しかし残念ながら「終わりですね~」というドライな回答。
署名活動等も一瞬よぎったけど、結局ビジネスである。
店員さんがドライである以上、署名活動等はナンセンスであろう。
僕にできることは、閉店まで一日でも多く狭山そばに通うことだけだった。

それからというもの、通える日は毎日のように狭山そばに通った。
肉そばやちくわ天そばも食べたが、やはりメインは春菊天。
ちなみにここのコロッケそばは正直あまりおいしくなかった。

最終日の大晦日


朝から本当に沢山の人が押し寄せたらしい。
僕は午前11時に食べに行った。
やはり春菊天を注文。
食べ終わったあと、店員さんに大きな声で「ごちそうさまでした!ありがとうございました!」と笑顔で伝えました。

その後都心に出て、用事を済ませて16時に戻った時にはもうシャッターが降りていたのである。
何かのイベント等やった形跡もなく、ひっそりと閉じていた。
散々食ったから満足していたけど、最後にセレモニーの一つでもできなったのだろうか。
横浜からも広島からも華やかな引退試合をしてもらえる石井琢朗を尻目に、現役にこだわったあまり結局横浜にも中日にも引退セレモニーをしてもらえなかった佐伯貴宏みたいだ。

しかしそれが現実。
あの日をもって僕と狭山そばの蜜月関係は終わってしまったのである。
自分で書いたくせに蜜月を壇蜜に空目する自分を殴りたい。
そんなことはどうでもいい。
ありがとう、狭山そば。

そもそも狭山そばとは?


wikipediaをひいてみると、狭山そばとは西武通運が経営する西武線沿線や駅構内で展開するそばチェーン店、らしい。
実は所沢から数駅先の清瀬駅構内や、前の職場の近くである西新宿にも狭山そばはある。
しかし、あくまでも僕の味覚だけど所沢駅構内店の味とはまったく異質のものである。

味が薄い。
あの「凶悪」とも言える濃さは再現できていないのである。
似て非なるもの。

あああ。
せっかく忘れていたのに、このエントリーを書いてたらもうあの味は二度と味わえないことを改めて自覚してちょっと寂しくなってきた。

そして僕は40代になっていく。

あの味にまた出会えるのか?


こんなエントリーを書いてる僕ですが、立ち食いそばに関して特に深い知見を持ち合わせていたりはしません。
「全国駅の蕎麦食い倒れツアー」。
もしそんな企画があってもまず行かない。
ですが、一度食べてみたいと思っているのが「長野駅1番線ホームの立ち食いそば」です。

狭山そば閉店の日。
隣のおっさんと話し込んだ時に出てきた話題。
おっさんも僕と同様狭山そばの熱烈なファン。
そんなおっさんが、狭山そばと同じくらい愛していたというのが長野駅1番線ホームのそば屋らしい。
「2番線のホームはだめ!1番線のホームな!兄ちゃんいきなよ!」などと妙な説得力で語るおっさん。
おかげで本当に気になっていて、いつか行こうと思いつつ2013年になってしまったわけです月日が経つのは早いね。
期待していってみようと思います。

つーわけでそばTLに感化されて書いてしまったエントリー。
書いてて楽しかった。
ちなみに@raf00 さんのエントリーはコロッケそば論から余談に至るまで実に奥深い考察された文章になってて必見です。
僕の文章は単なる郷愁です。

あ〜、そば食べたい。